事例1 事業承継計画の策定等を行い、子への円滑な承継を実現
中小同族会社の創業者である社長A(72 歳)は、後継者である子Bに社長職 を譲った上で引退することを考えていた。株式保有比率は、Aが 80%、Aの妻 が 20%で、今後段階的にBに対して譲渡していくことにしていた。Bは後継者として将来社長職に就くことを了解していたが、営業担当者とし て営業活動に従事していたものの、経営管理に関する知識に乏しく、実務にも 携わっていなかった。Aは社長職をBに譲ることはまだしも、株式を譲渡する ことにより会社運営の決定権を渡すことは絶対できないとして悩んでいた。 その後、AはBを含 む家族内で話し合いを行い、解決のためには事業承継を進めるための事前準備を行う必要があるとの結論に至った。そして、社長交代や株式譲渡の時期、後継者教育などについて、今後数年間をかけて徐々に進めていくために事業承継 計画を策定することとした。 税理士などの専門家の支援を得ながら計画を策定する中で、以前からBが経営管理業務の習得を望んでいたことが判明したため、社内での実務習得に加え、 社外の研修等を受講し始めた。こうした行動の変化に安心したAは、3 年後に社長職をBに譲り、5 年後までに全株式をBに集中することを盛り込んだ事業承継 計画をBとともに策定した。策定した計画については、主要取引先や金融機関 などにも開示し、その賛同を得ている。 現在AとBは、社長業の引継ぎを行うと同時に、Bを中心として事業承継計 画に盛り込んだ新規事業に着手するなど、二人三脚で事業承継計画を実行に移 しており、業績も順調に推移している。
事例2 対策を講じないで子に社長職を譲り、社長解任
業績が低迷していた中小同族会社の社長A(76 歳)は、高齢を理由に後継者
である子Bに社長職を譲り代表権のある会長に就任した。しかし、会社の実権を渡すのは時期尚早として、株式については継続してAが 100%保有していた。
新社長に就任したBは、株式はいずれ譲渡してもらえばよいと考え、社長交代に際して株式の譲渡時期といった具体的な取り決めを行わなかった。
社長交代以降、Bが主導して急速な経営改革を断行し、新規顧客の開拓や利益率の改善、経費圧縮等により会社の業績は回復。単年度収益の黒字転換を果たすことが出来たことに加え、若手従業員のモチベーションも向上していた。
しかし、Aは会社運営に関する相談をほとんど持ちかけられなかったことから内心面白くなく、加えて一部の古参従業員から不満をぶつけられたこともあり、臨時株主総会を開催してBを解任してしまった。
社長に返り咲いたAを中心に事業は続けられているが、社内の不和を主因として赤字に転落。取引先からは不自然な社長交代に関する問い合わせが相次ぎ、取引継続に関する不安が高まっていた。
このような状況のもと、BはなんとかAを説得して再度社長に復帰して業績回復を実現したいとしているが、Aの了解が得られず膠着状態が続いている。
である子Bに社長職を譲り代表権のある会長に就任した。しかし、会社の実権を渡すのは時期尚早として、株式については継続してAが 100%保有していた。
新社長に就任したBは、株式はいずれ譲渡してもらえばよいと考え、社長交代に際して株式の譲渡時期といった具体的な取り決めを行わなかった。
社長交代以降、Bが主導して急速な経営改革を断行し、新規顧客の開拓や利益率の改善、経費圧縮等により会社の業績は回復。単年度収益の黒字転換を果たすことが出来たことに加え、若手従業員のモチベーションも向上していた。
しかし、Aは会社運営に関する相談をほとんど持ちかけられなかったことから内心面白くなく、加えて一部の古参従業員から不満をぶつけられたこともあり、臨時株主総会を開催してBを解任してしまった。
社長に返り咲いたAを中心に事業は続けられているが、社内の不和を主因として赤字に転落。取引先からは不自然な社長交代に関する問い合わせが相次ぎ、取引継続に関する不安が高まっていた。
このような状況のもと、BはなんとかAを説得して再度社長に復帰して業績回復を実現したいとしているが、Aの了解が得られず膠着状態が続いている。
事例3 新規事業開発を通じて業容拡大し、後継者が戻った
電化製品の小売業を営んでいた中小同族会社の社長A(70 歳)には、後継者候補として大都市圏の大学を卒業し、そのまま同地の同業者に就職した子Bがいた。Bは自社の将来性を悲観しており、現在の勤務先を退職して地元に帰るのではなく、そのまま大都市圏に住み続けることを決めていた。
そろそろ事業承継の話をすべき時期だと感じたAがBに承継を打診したところ、会社を継ぐ意志のなかったBからあっさり断られてしまった。事業の存続をあきらめきれなかったAは、一念発起して後継者が継ぎたくなるような会社にしようと自社の磨き上げに着手した。
これまでは電化製品の小売のみで事業収益性が低かったことから、大型製品の販売から据付工事まで一貫した対応を開始したところ、引き合いが増加。丁寧なアフターフォローが評判となり、今ではこれまでの数倍の売上高や従業員数を誇るまでに至った。
帰省した際に自社の変貌ぶりに驚いたBは、自分が関与することにより事業拡大の可能性が高いことを実感した。こうした経緯からBは地元に帰ってくることを選択し、今では二代目経営者として自社の事業拡大に尽力している。
そろそろ事業承継の話をすべき時期だと感じたAがBに承継を打診したところ、会社を継ぐ意志のなかったBからあっさり断られてしまった。事業の存続をあきらめきれなかったAは、一念発起して後継者が継ぎたくなるような会社にしようと自社の磨き上げに着手した。
これまでは電化製品の小売のみで事業収益性が低かったことから、大型製品の販売から据付工事まで一貫した対応を開始したところ、引き合いが増加。丁寧なアフターフォローが評判となり、今ではこれまでの数倍の売上高や従業員数を誇るまでに至った。
帰省した際に自社の変貌ぶりに驚いたBは、自分が関与することにより事業拡大の可能性が高いことを実感した。こうした経緯からBは地元に帰ってくることを選択し、今では二代目経営者として自社の事業拡大に尽力している。
事例4 財務リストラ等の計画を立案した結果、後継者が承継を決断
機械部品の加工を営む中小同族会社の社長A(77 歳)には、後継者候補として自社工場の生産責任者として働く子Bがいた。
当社の業績は、東日本大震災や円高に伴う取引先の海外生産シフトを主因に低迷しており、収支についてはコストダウンや生産工程の改善等により回復傾向にあったものの、一時期増加した借入金の返済が進んでいないため、特に財務面について改善が必要な状況に陥っていた。
このような状況下、AはBに対して社長交代を打診したものの、工場内の生産現場をあまり離れることがなく、自社の経営実態を表面的にしか知らないBの了解を得ることが出来なかった。
自分の子であるBに会社を継いで欲しいAは、自社の抜本的事業再生への取組みを開始することを決断。一層のコストダウンに取り組んで黒字化に目処をつけるとともに、借入金の大幅圧縮にも着手した。
経営改善に取り組む父親の必死な姿を目にしたBは、経営を引き継ぐことを決意し、会社経営全般に関する知識の習得にも着手。今では経営者親子が協力し、更なる会社の磨き上げに取り組んでいる。
当社の業績は、東日本大震災や円高に伴う取引先の海外生産シフトを主因に低迷しており、収支についてはコストダウンや生産工程の改善等により回復傾向にあったものの、一時期増加した借入金の返済が進んでいないため、特に財務面について改善が必要な状況に陥っていた。
このような状況下、AはBに対して社長交代を打診したものの、工場内の生産現場をあまり離れることがなく、自社の経営実態を表面的にしか知らないBの了解を得ることが出来なかった。
自分の子であるBに会社を継いで欲しいAは、自社の抜本的事業再生への取組みを開始することを決断。一層のコストダウンに取り組んで黒字化に目処をつけるとともに、借入金の大幅圧縮にも着手した。
経営改善に取り組む父親の必死な姿を目にしたBは、経営を引き継ぐことを決意し、会社経営全般に関する知識の習得にも着手。今では経営者親子が協力し、更なる会社の磨き上げに取り組んでいる。
事例5 創業者の決断により、債務整理を行ったうえで廃業
食品製造業を営む中小同族会社の創業者である社長A(78 歳)は、後継者候
補が身内にいないため会社を存続させる対策について悩んでいた。
当社は、長期間赤字が続いていたため金融機関からの新規借り入れが困難であり、Aの個人資産を取り崩して運転資金に充当するなど、資金繰りが苦しい状態であった。また、顧問税理士からは以前より廃業を進められていたが、自分が設立した会社を何とか残したいとするAの強い意志により、事業をこれまで継続してきた。
このような状態の会社から相談を受付け、財務内容をまずチェックしたところ大幅債務超過であり、収支についても黒字化の目処が立たないことが判明。加えて建物や製造設備の老朽化が激しく、事業を継続するためには工場の立て直しが必要であることがわかった。
親族に加えて従業員の中にも後継者候補がいないことを確認した上で、M&Aによる引継ぎ先の確保が困難であることを、Aに対して丁寧に説明。Aも廃業することが最善の選択肢である事を理解した。
廃業を決断したAは商工会議所の支援を受け、弁護士に相談。従業員を全員解雇した上で、個人資産の処分による金融機関借入の返済等の債務整理に着手。
最終的には、従業員や取引先などに迷惑をかけることなく、自分が設立した会社の整理、廃業を行うことが出来た。
補が身内にいないため会社を存続させる対策について悩んでいた。
当社は、長期間赤字が続いていたため金融機関からの新規借り入れが困難であり、Aの個人資産を取り崩して運転資金に充当するなど、資金繰りが苦しい状態であった。また、顧問税理士からは以前より廃業を進められていたが、自分が設立した会社を何とか残したいとするAの強い意志により、事業をこれまで継続してきた。
このような状態の会社から相談を受付け、財務内容をまずチェックしたところ大幅債務超過であり、収支についても黒字化の目処が立たないことが判明。加えて建物や製造設備の老朽化が激しく、事業を継続するためには工場の立て直しが必要であることがわかった。
親族に加えて従業員の中にも後継者候補がいないことを確認した上で、M&Aによる引継ぎ先の確保が困難であることを、Aに対して丁寧に説明。Aも廃業することが最善の選択肢である事を理解した。
廃業を決断したAは商工会議所の支援を受け、弁護士に相談。従業員を全員解雇した上で、個人資産の処分による金融機関借入の返済等の債務整理に着手。
最終的には、従業員や取引先などに迷惑をかけることなく、自分が設立した会社の整理、廃業を行うことが出来た。
事例6 営業に注力してきた後継者が、内部管理等のスキルアップに努めた
中小同族会社の創業者である社長A(71 歳)は、後継者である子Bに社長職を譲ったうえで引退することを考えていたが、Bの経営者としての知識や経験が十分ではないと常々感じていた。
70 歳を超えたことを機に本格的に事業承継に取り組むことを決意したAは、Bに経営者としての経験を積ませるため、自社の経営課題と解決策について取りまとめるように指示した。これまで営業責任者として営業のみに邁進してきたこともあって独力では対応できないと感じたBは、公認会計士に支援を依頼し、課題抽出と対応策の立案に着手した。
公認会計士による調査の結果、営業面については青年会議所等で活躍してきたBの人脈活用や営業力により、同業他社と比較しても優秀であることが判明。
一方、内部管理面については旧態依然たる状況で、大幅な改善が必要であることが分かった。
特に経理財務および人事労務に関して改善が必要であったため、公認会計士および社会保険労務士の指導を受けながらBが責任者として対応することを決定。自社の課題解決を進めると同時に、Bは決算書の読み方や財務分析に関するスキルアップ、労務関連規程の整備や労務管理手法の習得に努め、社内を掌握出るまでに成長した。
このような活動を通じた社内体制整備の進展を実感したAは、経営者としてのBの成長を認め社長交代を決意。現在ではBが社長に就任し、会社の更なる成長に向けた取組を行っている。
70 歳を超えたことを機に本格的に事業承継に取り組むことを決意したAは、Bに経営者としての経験を積ませるため、自社の経営課題と解決策について取りまとめるように指示した。これまで営業責任者として営業のみに邁進してきたこともあって独力では対応できないと感じたBは、公認会計士に支援を依頼し、課題抽出と対応策の立案に着手した。
公認会計士による調査の結果、営業面については青年会議所等で活躍してきたBの人脈活用や営業力により、同業他社と比較しても優秀であることが判明。
一方、内部管理面については旧態依然たる状況で、大幅な改善が必要であることが分かった。
特に経理財務および人事労務に関して改善が必要であったため、公認会計士および社会保険労務士の指導を受けながらBが責任者として対応することを決定。自社の課題解決を進めると同時に、Bは決算書の読み方や財務分析に関するスキルアップ、労務関連規程の整備や労務管理手法の習得に努め、社内を掌握出るまでに成長した。
このような活動を通じた社内体制整備の進展を実感したAは、経営者としてのBの成長を認め社長交代を決意。現在ではBが社長に就任し、会社の更なる成長に向けた取組を行っている。
事例7 債務超過であったが、弁護士の支援で金融機関との調整に成功
オーナー社長は 80 歳近くと高齢であるが親族等の後継者候補はおらず、他方で従業員は事業を続ける士気が高く、社長自身も従業員への事業承継の必要性は認識していた。ただし、大きなネックとなったのは、金融機関からの借入金が会社の収益力に比して過大であり、これを返済しながら事業を続けるのは酷であること、社長が金融機関の借入金の連帯保証をしていたが、家族と居住する無担保の自宅不動産(妻と 2 分の 1 ずつで共有していた)を所有していたことであった。
事業承継の進め方に関しては、オーナー社長、幹部社員、弁護士が鋭意協議を重ね、とりあえずは幹部社員が出資する新会社に事業を承継させた。その直後に弁護士が旧会社と社長の代理人として全金融機関(信用保証協会がメイン)と鋭意協議を重ね、結果的に全金融機関の同意を得て、新会社が対金融機関負債を収益力に見合った範囲で一部を承継し、社長が旧会社の資産を換価することを条件に、金融機関に対する旧会社の借入債務とオーナー社長の連帯保証債務の免除を受けることができた。債務免除にあたっては、近時新たな運用が始まり案件が増え始めていることで注目を集めている特定調停手続を活用した。
また、「経営者保証に関するガイドライン」の適用を受けて、社長に自宅不動産の共有持分を残すこともできた。
事業承継後の新会社は、幹部社員である経営者の、経営改善を着々と進め、1期目から営業黒字を上げて業績は堅調である。
事業承継の進め方に関しては、オーナー社長、幹部社員、弁護士が鋭意協議を重ね、とりあえずは幹部社員が出資する新会社に事業を承継させた。その直後に弁護士が旧会社と社長の代理人として全金融機関(信用保証協会がメイン)と鋭意協議を重ね、結果的に全金融機関の同意を得て、新会社が対金融機関負債を収益力に見合った範囲で一部を承継し、社長が旧会社の資産を換価することを条件に、金融機関に対する旧会社の借入債務とオーナー社長の連帯保証債務の免除を受けることができた。債務免除にあたっては、近時新たな運用が始まり案件が増え始めていることで注目を集めている特定調停手続を活用した。
また、「経営者保証に関するガイドライン」の適用を受けて、社長に自宅不動産の共有持分を残すこともできた。
事業承継後の新会社は、幹部社員である経営者の、経営改善を着々と進め、1期目から営業黒字を上げて業績は堅調である。
※中小企業庁「事業承継ガイドライン」より